シャルル・ペパン著の書籍「考える人とおめでたい人はどちらが幸せか 世の中をより良く生きるための哲学入門 」の最初の章「考える人とおめでたい人は……」の個人的要点と、私自身の幸せに関する考えについて記します。
私としては、自分の「幸せ」に関する考えを深められたため、読んでよかったと思っています。
なお、この本は他にも法、美、学校など7つのテーマを扱っています。それぞれが独立した内容になっているため、他のテーマについては触れません。興味深い議題が多く、特に法を守る理由に関する話題は楽しく読めました。
自分なりの要点まとめ (“月曜日 思考”の章)
問題提起:あるがままを受け入れたほうが幸せではないか?
ロダンの「考える人」は、苦悩しているように見えます。
自分がどう生きるか、幸せになるためにどんな行動をすべきか。思い悩むことは苦しいように思えます。
考えることをやめ、ありのままの幸せを受け入れたほうが幸せではないか。
その日を楽しむ「おめでたい人」でいることが、最も幸福な人生なのでしょうか。
1. 「今」の偶然性、必然性に思いを馳せることで、幸福は増大する
古代ギリシアの哲学は近世以降の学術的な哲学より、生活に根ざしていました。変化に乏しい世界をどう捉え、幸福に過ごすかに主眼が置かれていたそうです。
世界に考えを巡らせることで見えるものは、「今あるものは数多の可能性、選択の積み重ねの上にある」ことです。
地球と太陽の距離がもっと遠かったら。両親が出会っていなければ。昨日の昼食で違うメニューを選んでいたら。
膨大な事象の果てにある現在を、偶然と捉える哲学者もいれば、必然と考える人もいました。
どちらの立場であっても、自分の存在がかけがえのないものだと理解できます。
素朴な「今生きててありがたい」と比べ、感じる幸福は大きく増大しうるわけです。
2. 物事の本質を知り、成長の実感を得ること自体が幸せである
哲学 Philosophy の原義は「知を愛する」ことです。
自分の幸せ、世界のあり方について考えても、答えは出ないかもしれません。哲学者たちが数千年間向き合っているにも関わらず、私達は毎日苦しんでいます。
それでも、自分なりに思考をを巡らせたり、先人の書物に触れたりすることで、世界の理を少しずつ掴んでいくことができるでしょう。
また、学びを深め、自分が成長している実感を得ること自体にも、幸福を感じます。欲求階層説で知られるマズローも「人間は自己実現に向かって絶えず成長するもの」と考えています。
3. 不安定な現代では、幸福は受け入れるものから追い求めるものに
ギリシア哲学の時代と現代で、大きく異なる前提があります。それは、人類が文明や地球を滅ぼす科学技術を手に入れてしまったことです。
大量の資源消費で地球は悲鳴を上げています。また、全世界の核兵器は、地球全土を何度も更地にできる威力があるようです。
おめでたい人が抱く「あるがままの幸せ」は、風前の灯かもしれません。不安定な時代だからこそ、自分なりの幸福を考え続ける意義があります。
感想
この本を読んだきっかけは、私の「幸せ」に対する考えを再考する知見が欲しかったからです。
2. 「思考の過程に幸せがある」主張はおおむね理解していましたが、1. の「現状の認識が変わり、得られる幸福が変わる」という観点は自分に不足していたので、読んでよかったです。
永田千奈氏の翻訳もあるかもしれませんが、文章が全体的につかみやすかったです。また、注釈で情報量も確保されている点も素晴らしいと感じました。
考える人とおめでたい人はどちらが幸せか 世の中をより良く生きるための哲学入門
参考:本書を選定した背景
先日の記事「私が自動車業界で働く理由」で、私の人生の目的が居住地にとらわれない自由な自己実現を促すことだと述べました。
この考えは、「田舎に住んでいると見える選択肢が減って、思考が狭くなりがち。様々な可能性を考慮した上で選んだ人生の方が、たとえ同じ結果でも幸せだ」という私の経験則に基づいています。
今後この指針で活動していくにあたり、自分の思考の妥当さを検証する必要があると考えました。一人で妄想するならまだしも、情報で発信して他人に影響を与えるなら、それなりに根拠と責任を持ちたかったからです。
現在
- 哲学、心理学(幸福の論拠)
- 学習法(賢くなって選択肢を増やす方法)
- 経済(金銭に縛られない生活)
といった内容を浅く広く勉強中です。情報は、書籍、図書館、インターネットなど、様々な媒体から得ています。
本書もその一つです。図書館で背表紙を眺めていたとき、ちょうど自分の脳内と近いトピックだと感じて読みはじめました。