私は、長らくスピッツが好きです。
どのくらいかというと、生まれる前からです。
親がその頃からスピッツのファンで、私もお腹の中で聴いていたそうです。
音楽を好きになり、自分で楽曲を作るようになったことも、振り返ればスピッツの影響が一番大きいのかなと思います。
そんな私が一番好きな楽曲のひとつが「渚」です。
「渚」に感じる、宇宙の誕生と膨張のような壮大な印象
「渚」を聴いて、どのような波打ち際が頭に思い浮かびますか。
私はいつも、広大な銀河が渦を巻いている光景を想起します。
星々が生まれたり消えたりしながら、宇宙は絶えず流れ大きくなっていく。
そういった印象を受けます。
どうしてだろうと考えた結果、
- すべてが生まれる出会いを象徴する「渚」の歌詞
- スピッツメンバーの良いところがサウンドの随所に現れている
以上のような要因があるのではと思い至りました。
1. すべてが生まれる出会いを象徴する「渚」の歌詞
渚という語句が象徴するもの
渚は海と陸の境界線であり、異なるものが混ざり合う場所です。
渚は二人の夢を混ぜ合わせる 揺れながら輝いて
引用:スピッツ「渚」 作詞・作曲 草野正宗
この部分は、異なる人間同士が出会い関わり合うことで、物質、精神の両面で様々なものが生まれる様子が表されていると感じます。
様々な自然の情景
歌詞全体からは自分から「君」への恋慕が示されていますが、単なる恋愛の歌にとどまらない印象があります。
その要因には、歌詞に現れる様々な自然の情景が、あるのではないでしょうか。
関係する語句を抜粋すると、こんな感じです。
- 砂漠
- 六等星
- 風
- 波(3回)
- 水
- 渚(2回)
- (残り火)
やはり水に関わる語句が多いものの、大地から宇宙までバリエーションに富んでいます。
こうした部分に、壮大な印象を抱かせる要素があるのではと考えています。
2. スピッツメンバーの良いところが、サウンドの随所に現れている
本楽曲は、メンバーの持ち味が随所で活かされており、結果的に伸びやかで壮大なサウンドになっているものだと分析しています。
メンバー毎に、個人的な聴きどころを書いていきます。
ボーカル:草野マサムネのコーラス
個人的な聴きどころは、多重録音によるコーラスです。
草野さんは繊細な歌声を持っており、息の成分が多く含まれたコーラスでも持ち味が発揮されます。
サビの入りにフェードインで挿入される「ハァーー」ってやつです。
寄せてくる波を感じます。
ギター:三輪テツヤのE-BOWプレイ
三輪さんの代名詞はアルペジオで、「渚」でも大活躍しています。
ただ、それ以上に私が推したいのはE-BOWを用いたプレイングです。
E-BOWは電磁石でギターの弦を振動させる装置で、音が半永久的に続く特殊なサウンドとなります。
よく聴こえるのは3:52あたりから右側で鳴っているフレーズですね。
伸びやかだけど枯れた音に、奥行きを感じます。
E-BOWが印象的なスピッツ曲に「流れ星」があり、どちらも宇宙を感じるなあと思いました。
ベース:田村明浩の自由度あふれる演奏
「渚」は終始一貫して、シンセサイザーの打ち込みによるベースのシーケンスフレーズ(同じパターンの繰り返し)が流れています。
つまり、ベースの役割である、楽曲のリズムとコード感をボトムで支える要素の一部が肩代わりされているわけです。
その分、エレキベースが奏でていいフレーズの自由度が上がります。
普段から田村さんのベースラインはよく動きますが、「渚」では一層活き活きしています。
特に、一番サビの「波の音に染まる」とハーモニーを形成している箇所が色っぽくて好きです。
ドラム:崎山龍男の堅実なテクニック
「渚」では前述のベースをはじめ、スピッツ曲としてはシンセサイザーの打ち込みが多めです。
リズムも四つ打ちで単調になりそうなのに、むしろ生命の躍動感すら感じさせます。
崎山さんのドラム演奏が、楽曲にメリハリを与えてくれています。
楽曲の後半になるにつれて、タムを細かく取り入れたドラミングになります。
手数が多くて難しそうですが、全然嫌味がないところが素晴らしいです。
大切な楽曲「渚」を、じっくり聴けてよかった
レビューの所感
私が「渚」に感じていた壮大なイメージは、歌詞とサウンドの両面から生まれていたことがわかりました。
改めてしっかり聴いてみて、好きだなあ! と思い直しました。
自分が今「輝いて」いるか、見つめ直す契機にもなりました。
今後人生経験が増えた時に聴いたら、どのように感じるか楽しみです。
楽曲レビューについて
本ブログの初楽曲レビューで、試行錯誤しながらも楽しく書きました。
現代は、サブスクリプションサービスで一生かけても網羅できない膨大な曲を楽しめます。
とても恵まれた世界です。
一方で、こうして大切な楽曲にじっくり向き合う時間も、贅沢なものだと確信できました。
折を見て続けます。
それでは、またいつか。
CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection(通常盤)