EMC(Electromagnetic Compatibility、電磁両立性または電磁適合性)とは、「他の機器を妨害する電磁波を出しておらず、他の機器の電波で誤動作しない」性能のことです。
EMCは、以下の2要素に大別されます。
- EMI(エミッション)……他の機器の障害を起こしうる電波の放出
- EMS(イミュニティ)……他の機器の電磁波によって誤動作しない性能
自動車には様々な電子機器が搭載されており、電波で通信する装置もたくさんあります。
ゆえにEMCは、安全・快適な運転をする上で欠かせない要件です。
本記事では、
- EMCが影響する機器
- EMCの欠如がもたらす悪影響
- EMC対策
について解説します。
車の内外では、多様な電磁波が行き交う
この記事を読んでいるスマホやPCも、電波で通信していますよね。
それと同様に、車でも様々な機器が電波を使います。
具体的には、次のような装置です。挙げようと思えばキリがありません。
- キーレスエントリー、スマートキー
- ETC
- ナビのGPS
- 持ち込んだスマホの携帯回線
- オーディオのBluetooth
- AM / FMラジオ、ハイウェイラジオ、テレビ
こうした機器の無線通信によって、私達は便利なカーライフを送ることができています。
また、車を制御するコンピュータや、モータとその制御装置(インバータ)等からも、ノイズとして電磁波が放出されています。
EMIが対策されていないと
もし自動車から、他の電子機器の通信を妨害する電磁波が出ていたら、どんな悪影響があるでしょうか。
ナビやスマホが圏外に ETCが使えない
せっかくルートをセットしても、GPSや携帯回線が通じなくなれば、道案内してもらえません。
もしETCの通信がうまくいかなければ、最悪バーに激突する羽目になります。
電子機器が壊れる
あまりに強い電磁波が出ていると、電子機器が誤作動したり、壊れてしまうかもしれません。
それは困ります。
EMSが対策されていないと
他の機器の電磁波で自動車が誤作動してしまった場合、次のような悪影響が考えられます。
カギが開かない エンジンがかからない
現在幅広く普及しているスマートキーは、車とキー同士が微弱な電波で通信して動作します。
これらが電波障害で正常に動作しなければ、そもそも走り出せません。
車が故障、暴走する
スマホを使っただけで車が壊れたりしたら、困りますよね。
走行中に電磁波で誤動作してしまったら、操作が効かなくなって重大事故となるケースも想定されます。
自動車は設計や生産のミスで人命を奪いかねないことを、忘れてはなりません。
EMC対策のため、メーカーが行っていること
当然、これまで述べた不具合を起こさないよう、技術者たちは対策をしています。
設計の段階では、電磁波を遮断する部材で覆ったり、影響を受けづらい構造にしたりします。
加えて、ISOなどの国際規格や自主基準に則ったEMC実験、検査も実施されます。
計測する場所は電波暗室という、無響室みたいな見た目の施設です。
電波を拡散する風変わりな構造物が壁一面に敷き詰められていて、ユニークな空間ですよ。
外部からの影響を遮断した上で、製品から出る電磁波を計測したり、逆に電磁波を浴びせて動作を確認したりします。
最後に:何気なく通信できていることが、実はとってもありがたい
以上が、自動車のEMCに関する説明です。
電波が飛び交う中で安心して車を使えるよう、きっちり対策がなされています。
もちろん車だけでなく、スマホやPCといった身の回りの電子機器も、EMCが重要です。
いろんな人が電波やEMCのルールを定めて守っているからこそ、快適な無線ライフが成り立つわけですからね。
「当たり前」を当たり前にするための尽力に、感謝したいと感じました。
EMC専門サイトの紹介
最後に、EMCの解説だけで1サイトが使われている、CEND-EMC対策・ノイズ対策の総合情報サイト- を紹介しておきます(別に回し者や広告の類ではないですよ〜)。
厳密な定義や製品がすごく丁寧に書かれており、初心者向けの講座もありました。